活性酸素がお肌に与える影響とその対策
活性酸素とは?
活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)は、体内でエネルギーを作り出す際に発生する酸素分子の一種です。通常の酸素分子に比べて化学的な反応が非常に高く、酸化反応を引き起こします。この性質が役立つ場面もありますが、過剰になると体に悪影響を及ぼします。
活性酸素の役割
1. 防御機能
活性酸素は、体内に侵入した病原体(細菌やウイルス)を攻撃して破壊する重要な役割を担っています。特に、白血球の一種であるマクロファージや好中球は、活性酸素を利用して異物を排除します。
この仕組みは「呼吸バースト」と呼ばれ、感染症から体を守る自然免疫の一環です。
2. 細胞の機能調節
適度な量の活性酸素は、細胞間や細胞内で情報を伝達するシグナル分子としても働きます。この働きにより、以下のような生理的プロセスが調節されます。
- 細胞の成長や分化
- アポトーシス(古くなった細胞の計画的死)
- 炎症反応の制御
3. 血管機能の維持
活性酸素は、一酸化窒素(NO)とともに血管の拡張や収縮を調整し、血圧や血流を正常に保つ役割を果たします。ただし、活性酸素が過剰になると血管壁が傷つき、動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。
4. 細胞のエネルギー代謝のサポート
活性酸素は、細胞のミトコンドリアでエネルギー(ATP)を生産する際に発生します。このエネルギー産生プロセスで、活性酸素は副産物として生成されますが、細胞が正常に機能するための指標としての役割も果たします。
適度な量の活性酸素が存在することで、これらの機能がスムーズに進行します。
活性酸素がお肌に与える影響
活性酸素が肌の老化に与える影響は非常に大きく、いわゆる「酸化ストレス」の主要な原因の一つとされています。これを 「酸化による肌老化(オキシダティブスキンエイジング)」 と呼びます。主な症状について解説します。
お肌の老化を加速する
活性酸素が増加すると、肌の真皮にある繊維芽細胞がダメージを受けます。
これにより、コラーゲンやエラスチン(肌の弾力を保つ成分)の生成が減少し、さらに分解酵素(MMPs)も活性化するので、これらの成分が壊れやすくなり、肌の弾力やハリを奪います。そして、シワやたるみといった老化現象が進行します。
特に紫外線を浴びることで発生する活性酸素は、光老化(光による肌の老化)の大きな原因となります。
シミやくすみの原因
活性酸素がメラノサイト(メラニンを生成する細胞)を刺激することで、過剰なメラニンが生成されます。
この過程が続くことでシミができたり、肌がくすみ、肌の透明感が失われてしまいます。
お肌のバリア機能の低下
活性酸素は肌の保湿機能を担うセラミドを破壊します。これにより、肌が乾燥しやすくなり、外的刺激(紫外線や汚染物質)に敏感になります。
また、肌荒れや炎症を起こしやすくなります。
炎症やニキビの悪化
活性酸素の過剰発生は、皮膚細胞や脂質、タンパク質を酸化させます。
活性酸素は免疫反応を刺激し、炎症を引き起こす物質(サイトカインやプロスタグランジン)の分泌を増やします。
また活性酸素が皮脂を酸化させると、過酸化脂質が生成されます。その結果、毛穴の詰まりやアクネ菌の増殖を促進し、ニキビや肌トラブルが悪化する原因に。
活性酸素が発生する原因
活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)は、体内の酸素代謝に伴って自然に発生するものですが、特定の外部要因や生活習慣によって過剰に増えることがあります。以下に、活性酸素が発生する主な原因を解説します。
ストレス
心理的ストレスは、私たちが日常生活で経験する精神的な負担や緊張状態を指します。外部からの刺激やプレッシャー、内面的な悩みや葛藤が引き金となり、心と体に影響を及ぼします。
心理的ストレスを感じると、体内でコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌されます。この反応により代謝が乱れ、活性酸素が増加します。
激しい運動
激しい運動とは、心臓や筋肉に短時間で高い負荷をかける運動を指します。具体的には、高強度で心拍数が急上昇し、息切れを感じるような運動が該当します。一般的に、運動強度を心拍数で表す場合、最大心拍数の70%以上程度が激しい運動とされます。
激しい運動により、酸素消費量が増えることでエネルギー産生過程が活発になり、活性酸素が副産物として発生します。特に無酸素運動や過度な運動は、酸化ストレスを増加させる可能性があります。
飲酒・喫煙
アルコールを分解する際に、肝臓で活性酸素が生成されます。過剰摂取は肝臓への負担を増やし、酸化ストレスを引き起こします。
また、タバコの煙に含まれる有害物質(ニコチンや一酸化炭素)が体内で酸化ストレスを引き起こします。喫煙により血流が悪化し、肌の修復能力も低下します。
紫外線
紫外線は、太陽光に含まれる目に見えない光の一種で、波長が短くエネルギーが高い電磁波です。紫外線は、私たちの日常生活や自然環境に大きな影響を及ぼします。適度な紫外線は体に有益な場合もありますが、過剰な曝露は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
また紫外線は、肌細胞内で活性酸素を生成する最大の要因です。紫外線により発生した活性酸素が肌のコラーゲンやエラスチンを分解し、光老化(シミ・シワ)の原因となります。
大気汚染
PM2.5や排気ガス、工場から出る化学物質などの大気汚染物質が皮膚表面に付着すると、肌細胞内で活性酸素が生成されます。
食生活
食事の時間が不規則だったり、加工食品やジャンクフードを中心とした食事、脂質や糖質の摂りすぎなど栄養バランスの取れていない食事をすることで活性酸素が発生しやすくなります。
・高脂肪・高糖質の食事は、体内の酸化反応を活発化させます。
・トランス脂肪酸を多く含む加工食品は特に活性酸素を増やす原因となります。
睡眠不足
睡眠不足が活性酸素の増加を引き起こすのは、体が十分な休息を得られず、細胞や組織がストレス状態にさらされます。
睡眠中、体は抗酸化酵素(スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼなど)を活性化し、活性酸素を除去します。
睡眠不足になると、これらの酵素の働きが低下し、活性酸素が蓄積しやすくなります。
また、交感神経を活性化し、代謝が亢進します。この過程で酸素の消費が増え、活性酸素の発生が増加します。
そして体内で慢性炎症を引き起こします。炎症は白血球を活性化させるため、活性酸素がさらに生成される原因になります
活性酸素の発生を抑える方法
ですが、無理せずサプリメントなども取り入れながら、活性酸素の発生を抑制、そして発生した活性酸素を除去していくことを目指しましょう。
サプリメントを摂取する
抗酸化物質が含まれたサプリメントにはビタミンCやポリフェノールなど様々な成分のものがあります。
中でも、SOD酵素を含むサプリメントは、活性酸素を除去する酵素という意味を持つSOD(Superoxide dismutase,スーパーオキシドディスムターゼ)が含まれています。
体内のSODは年々減少し、活性酸素を分解する力は落ちていきます。SODは食品からの摂取も可能ですが、毎日摂り続けることは難しいため、サプリメントでの摂取がおすすめです。
紫外線対策を徹底
紫外線は活性酸素を増やす大きな要因。
紫外線一年中降り注いでいるので、目的に応じた対策をすることをおすすめします。
- 日焼け止めを毎日塗る(SPF30以上推奨)
- 帽子や日傘、UVカットの衣服を活用する
ストレスを減らす
ストレスは活性酸素を過剰に発生させます。
好きな音楽を聴いたり、趣味を楽しむ時間を取ったり、ヨガや瞑想、適度な運動を取り入れてリラックスする時間を確保しましょう。
食生活の改善
抗酸化物質が含まれている食品を摂るように心がけましょう。
抗酸化物質は活性酸素を無害化する働きを持っています。
- ビタミンC:レモン、キウイ、いちご、ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草
- ビタミンE:ナッツ類、アボカド
- ポリフェノール:緑茶、カカオ、ブルーベリー
- カロテノイド:にんじん、かぼちゃ、さつまいも、トマト、スイカ
しかし、適切なインナーケアを行うことで、その影響を抑えることが可能です。抗酸化物質を積極的に摂取し、紫外線対策やストレス管理を取り入れることで、健康で美しい肌を保ちましょう!